投資は実質利子率に本当に依存するのか検証【経済学の疑問】

投資は実質利子率に本当に依存するのか検証【経済学の疑問】

前回、アベノミクスの金融緩和の狙いについて解説しました。今日は、それに対する疑問点について、投稿したいと思います。具体的には、経済学の投資は実質利子率に依存するという点について、疑問を投げかけてみます。意外と、当たり前と思われることでも説明できないことは多いですよね。今日は投資と実質利子率の関係性にメスを入れて、改めて考え直してみます。

 

目次

1.インフレ率が高まるとどうなるのか、具体例を挙げて考えてみる

2.投資は実質利子率に依存しないと考える理由

3.実質利子率と消費の関係

 

投資は実質利子率に本当に依存するのか検証【経済学の疑問】

1.インフレ率が高まるとどうなるのか、具体例を挙げて考えてみる

早速ですが、実質利子率は以下の式で表されます。長期的には、この実質利子率に企業の投資は依存するというのが経済学の考え方です。

$$実質利子率=名目利子率-期待インフレ率$$

さて、今回の記事のテーマになるのですが、「何故、期待インフレ率が上昇すると、実質利子率が低下し、企業の投資が増加するのか」ということです。

経済学のテキストでは、「インフレが発生すると、企業は販売する物が高く売れるので、収入が増加し、返済原資が増える」といったニュアンスのことが書かれています。

収入が増加するというのは間違いないでしょうが、返済原資が本当に増えるのかがポイントです

私は、もともと銀行員ということもあり、企業の返済についてはある程度理解しているつもりです。

企業は、売上から原価や販管費などを差し引いた利益に、減価償却費などの非資金費用を足し合わせたキャッシュフローから返済を行います。

 

さて、具体例を挙げて、見ていくことにします。

まず、インフレが起きて企業が販売する商品の価格が上がっても、同時に原価や販管費もすべてインフレが起きているはずです。

少し、極端な例ですが、インフレ率が200%(物価が倍)であれば、以下の通りです。

※ここでは、減価償却費は簡便化のため、無視して考えます。

インフレ率が高まるとどうなるのか、具体例を挙げて考えてみる

このように、確かに営業利益が20,000円から40,000円へと、インフレ率と同率の200%増加しています。

 

2.投資は実質利子率に依存する

さて、実際は、原価や経費の値上がり分を完全に販売価格に反映させることができないケースもあるでしょう。

例えば、以下のようなケースです。

投資は実質利子率に依存しないと考える理由

さきほどの表との違いは、売上が原価や販管費のように200%値上げできないということです。

売上は、原価などの諸費用分の値上げにとどまっています

川上から川下へと続く商流の各段階で、インフレ率は異なり、川下に近づくにつれて低くなっていく可能性もあるということです。

 

しかし、このような例があっても、一国全体で平均すると、インフレ率分は販売価格が上昇し、利益が増加するはずです。

先ほどの例では、利益はインフレ率200%と同率で、つまり、20,000円増加しました。

この増加分20,000円を含む利益40,000円を使って、この企業が買うことができる物や雇える人員数は当初の利益20,000円で行う場合と変わりません。

何故なら、買う対象の物の値段や人件費も同率で上昇しているはずだからです。

つまり、200%の値上げをしないと、利益額は増えてもその価値が減少してしまいます。

よって、値上げせざるを得ないでしょう。

 

一方、もともと借りていたお金の元本だけは、契約書で定めた金額なので、増加しません。

つまり、インフレによって、増えた利益を含めたお金の総額の購買力は変わらないけど、返済能力だけが高まるということです。

 

3.実質利子率と消費の関係

ここからは、余談ですが、実質利子率の低下は投資に影響を与えなすが、それ以外にもと影響を受けるものがあります。

実質利子率の低下は、貯蓄(預金など)することへの魅力を低下させるため、消費を刺激し、経済を活性化させるという別の側面です。

人々は、働いて得た所得の内、一部は貯蓄し、残りを消費に回します。

実質利子率の低下は、貯蓄した場合に得る将来のリターンが少なくなることを意味するため、所得の内、より多くの割合を消費に回すようになります。

余談ですが、所得の内、消費に回す割合を経済学では限界消費性向と言ったりします。

 

最後に、経済学を学ぶ方は、以下の記事を読むことをオススメします。

経済学の独特の考え方について、事前に理解しておくことは、その学びをスムーズにすることを手助けします。

経済学の世界と現実世界が乖離している理由

 

『本日の気づき』

・インフレが生じると、お金の購買力は変わらないが、返済能力が高まるので、投資は実質利子率に依存する

・実質利子率の低下は消費の増加につながる可能性がある

 


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