【経済の疑問】アベノミクスの金融緩和の狙い【利子率はこれ以上下がるのか】

【経済の疑問】アベノミクスの金融緩和の狙い【利子率はこれ以上下がるのか】

こんばんは。今日は、アベノミクスの重要な施策の1つである金融緩和について、解説していきます。この投稿の趣旨は、既に日本は、利子率が0%に近いくらい低いにも関わらず、これ以上、金融緩和によって利子率を引き下げることなんて可能なのかを検討し、アベノミクスの意図を探ることにあります。結論からいうと、きちんとした狙いがあります。

 

目次

1.金融緩和とは

2.金融緩和と利子率の関係

3.名目利子率と実質利子率の違い

4.アベノミクスの狙い

5.用語のご紹介

 

【経済の疑問】アベノミクスの金融緩和の狙い【利子率はこれ以上下がるのか】

1.金融緩和とは

まずは基本的な説明から行います。

早速ですが、金融緩和とは、日本銀行が紙幣を市場に供給する(お金を増やす)ことです。

その方法はいくつかありますが、例えば日本銀行による国債の購入が挙げられます。

国債とは、政府がお金を借りるために発行します。

つまり、買う人は政府にお金を貸すことになります。

 

国債を既に保有している民間の組織や人が世の中には沢山います。

この人達から、日銀が国債を購入するわけです。

そうすると、この人達は日銀から売却代金を得るため、市場にお金が増えるわけです。

余談ですが、このように、日銀が国債の売買により、市場に流れるお金の量を調整する手法を公開市場操作といいます。

 

2.金融緩和と利子率の関係

さて、上記のようなプロセスで、世の中にお金が沢山出回ると、利子率が低下します。

お金が沢山出回ると、お金を持っている人は、使いきれないお金を誰かに貸そうと考えるからです。

しかし、借りたいと思っている人の数は変わらないわけです。

では、「借りたいと思っている人を増やすにはどうすればよいか」、それが金利の引き下げです。

このように、経済学では、余っているお金を全て貸切るまで利子率が下がると考えられています。

利子率が低下すると、企業は設備投資のための借入をしやすくなります。

これにより、投資を活発化させ、経済をよくするのが金融緩和の狙いですが…

 

日本の利子率は既に0%に近いため、「あまり効果がないのではないか」(これ以上利子率が下がる余地はない)と思うわけです。

しかし、アベノミスクでは、効果を見込んで金融緩和を行っています。

これについて、次の章で説明していきます。

 

3.名目利子率と実質利子率

実は、この~%と普段呼んでいるのは、名目利子率というものです。

しかし、経済学の分野では実質利子率というものがあります。

 

名目利子率と実質利子率の違いを説明するために、例を挙げます。

今、100円を持っているとします。

りんご1個100円とし、1年後に102円に値上がりすると仮定します。

又、利子率1%と仮定すると、手持ちの100円を預金すると、1年後に101円になります。

ここで、問題なのが、今持っている100円でりんごを1つ買えますが、1年後に同じように買おうとしても買えないということです(101円で102円のりんごは買えない)。

つまり、1年間の間でお金の価値が下落するということです。

 

金利1%は先程申しましたように、名目利子率といい、この例のりんごの2%の値上がりはインフレ率といいます。

名目利子率とは異なる実質利子率は簡便的に以下の式で計算します。

$$実質利子率=名目利子率-期待インフレ率$$

先程の例では、以下の通りです。

$$-1%=1%-2%$$

つまり、お金の価値は1年間で-1%分下落するということです。

 

尚、期待インフレ率の期待とは、りんごが1年後に100円から102円に値上がりすると仮定しましたが、実際は先のことなんてわからないから、期待(=予想)ということです。

 

4.アベノミクスの狙い

アベノミクスでは日本では既に名目利子率が0%近辺で変えられないので、期待インフレ率を上昇させ、実質利子率を低下させることを狙っているのです。

期待インフレ率が上昇するということは、設備投資をして手に入れた機械設備で生産し、それを販売することで得られる利益が増加するということです。

つまり、設備投資は、実質利子率の低下により増加します。

日銀が、名目利子率(≒借入にかかる金利)から期待インフレ率を差し引いた実質利子率を低下させることで、企業は積極的に設備投資をしようと考えるわけです。

 

例えばインフレ率が0%から2%に変化すると、実質利子率は2%も低下します。

その効果は大きいというわけです。

※この点について、よく分からない方は、以下の記事で詳述していますので、ご確認下さい。

投資は実質利子率に本当に依存するのか検証【経済学の疑問】

 

さて、どのように、期待インフレ率を上昇させようとしているかということが重要なのですが、新聞やニュースでひっきりなしに聞くのが、「物価上昇率(≒インフレ率)が2%になるまで、金融緩和を絶対に続ける」ということではないでしょうか。

アベノミクスの狙い

一般に、お金の量が増えれば物価は上昇します。

例えば、急に世の中にいる人全員の手持ちのお金が2倍に増えたとします。

その場合、物を販売する人達は、2倍の価格に値上げしても売れるため、値上げすることになります。

このように、お金の量と物価は連動しているわけです。

アベノミクスでは、インフレ率2%を達成するまで金融緩和を続けると誓うことで、人々の期待インフレ率を2%へ高め、実質利子率の低下により、設備投資を刺激し、経済を活性化させることが狙いというわけです。

 

ここで、注意しなければならないのは、政府は「やっぱりインフレ率2%は厳しそう」だとか、「金融緩和をやめるかもしれない」ということを絶対に言ってはいけないということです。

それを言ってしまうと、人々の期待がそがれてしまうからです。

そのため、政府は多少上手くいっていなくても、又、マスコミがどのように報道しようとも「ちょっと先になるかも知れないが、最終的には必ずインフレ率2%を達成する」と言い続け、国民に誓うのです。

 

これが意味することは、「経済の活性化とは、『期待』という何ともふわっとした、人々の感情にかかっている」ということなのです。

そして、国民が政府や日銀を信じた時、投資は活性化するということです。

そのような中、ニュースや新聞で「インフレ率2%はなかなかうまくいっていない」なんて報道していることは、その期待をそぐことに加担していることになります。

このような、マスコミなどの逆風にさらされながら、政府は舵取りをしているということです。

 

5.用語のご紹介

日本のように、既に名目利子率が0%近辺で、金融緩和によって、これ以上名目利子率を下げられない状況のことを『流動性の罠』といったりします。

ちなみに、今回書いた期待インフレ率を上昇させることによって、実質利子率を低下させ、経済を活性化させる金融政策は、『リフレーション政策』と呼ばれるものです。

その際、政府が「インフレ率〇%達成」を目指すことをインフレターゲットといい、それを国民に約束することで、国民の期待インフレ率が高まることをアナウンスメント効果といいます。

しっかりと経済学の教科書にも書いているものですので、気になる方は検索して見て下さい。

 

最後に、経済学について考える際は、以下の記事を読むことをオススメします。

経済学の独特の考え方について、事前に理解しておくことは、その学びをスムーズにすることを手助けします。

経済学の世界と現実世界が乖離している理由

 

『本日の気づき』

金融緩和は市場に出回るお金の量を増やすことである

・金融緩和を行うと、利子率が低下する

・普段目にする利子率は名目利子率で、そこから期待インフレ率を引いたものを実質利子率という

・アベノミクスは、実質利子率を低下させることで、投資を活性化させようとしている

 


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